第18回弦躋塾セミナーの動画

九州では熊本地震の余震が今も続いています。被災された方々にお見舞い申し上げます。

 

このたび第18回弦躋塾セミナー(2003年開催)の動画が完成し、YouTubeにアップロードしました。特別講師は積聚会会長の小林詔司先生です。全3巻で、パート1は小林先生の講義、パート2は小林先生の実技、パート3は首藤先生の講義と実技が収録されています。私個人のビデオカメラで撮ったもので映りが悪いですが、講演内容は素晴らしいです。パート1の小林先生の講義は、音声が聞きづらいために字幕をつけました。また実技には、『続・積聚治療』を参考にしてキャプションを入れました。小林先生には動画公開のお許しを頂いただけでなく、『続・積聚治療』を贈呈して頂き、感謝しております。 

小林先生の講演について

今回、編集作業をしていて、積聚治療はシンプルでわかりやすく、非常に魅力的な治療法だと改めて感じました。脈診でさえも指標のひとつとして考えますし、脈の調整は太淵か大陵で行ない、その評価も孔最の反応によって確認できます。これならば初心者でも臨床で活用できるでしょう。健側に刺鍼をするということも積聚治療の特徴です。これも患部を問題とするのではなく、精気の虚によって患部に指標が表れていると考えます。鍼灸師としては硬結に鍼を当てたいところですが、私も先日、腰痛患者に対して、あえて健側の志室のみに刺鍼したところ、患側の硬結が緩んでしまいました。しかも、一週間後に再来院した際、「あれから腰が楽になってねえ」と患者に言われ、「いつもの鍼より効いてるかも?」と内心驚きました。そして、その際に必要になるのが意識です。小林先生の講演で最も印象に残った言葉であり、これは「気至る鍼」をするための具体的な方法であると思いました。

 

実技では、積聚治療の初心者にわかりやすいように、4人のモデルともに第一方式で治療を行なっています。背部兪穴を治療する際に、4つの領域すべてをやる前に指標が取れてしまうケースが多く、小林先生の治療技術の高さが伺えました。腹診では剣状突起、臍、恥骨付近をよく触診していたので、澤田流の影響もあるのかなと感じました。患者の汗をよく拭くことも、そこまで汗が出ることも印象的でした。

 

ただ、経絡治療をしている人は用語の意味の違いに混乱するかもしれません。たとえば陰虚は内熱ですが、積聚治療では身体の下位から始まる冷え病症のことをいいます。心虚証という言葉もしかりです。 それから、この動画を撮影した2003年当時と現在では解釈が異なっている部分(痛積・牢積の場合、肝積は肺虚証など)もあると思いますので、ぜひ『続・積聚治療』を読まれることをお勧めします。また現在、北米東洋医学誌(NAJOM)に高橋大希先生が積聚治療入門を連載されているので、そちらも参考になります。

 

首藤先生の講演について

実技を見ると、取穴や刺鍼の手の動きがとても速くて驚きました。動画を撮っていて本当に良かったです。もう弦躋塾では学べませんが、動画は繰り返し見て学べるので、記録としても教材としても貴重だと思います。ぜひ若い鍼灸師や学生の方に見ていただきたいです。

最後にお願いがあります。

 

私がYouTubeにアップした弦躋塾セミナーの動画について、首藤鍼灸院に問い合わせをする人がいるようですが、大変迷惑がかかりますので止めてください。同様に特別講師の先生にも問い合わせをしないよう、よろしくお願いします。

 

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コメント: 4
  • #1

    山本卓 (土曜日, 23 4月 2016 23:50)

    首藤先生、小林先生、動画を公開するご許可を下さいまして、誠にありがとうございます。
    高嶋先生、何時も貴重なビデオをアップして下さった上に、解りやすくご編集をして下さったり解説を付けて下さいまして、ありがとうございます。

    当時の事を鮮明に覚えております。
    と言うよりもこの日のセミナーが現在の私の治療に、今も大きく影響をしていた事に改めて気が付きました。
    当時の私は患部の方がしっかりと反応が出ており取穴が容易と考えておりましたので、小林先生に「健側では取穴が難しいのでは?」と質問をした所、「健側の方が正しい位置に経穴があるので取穴がし易い」とお答えを頂き、今も強い影響を受けております。

    首藤先生や諸先輩方から学び、一年に一回のセミナーでは偉大な先生から学ぶ機会もあった弦躋塾は本当に有り難かったなと、改めて感謝の気持ちがわきました。

  • #2

    高嶋 (日曜日, 24 4月 2016 15:29)

    そういう貴重な昔話は、どんどんして下さい。

    小林先生は健側に鍼をしますが、(補助治療として)灸は患側にしていましたね。鍼はほとんど刺激がないけど、灸はしっかり熱くすえていたことも印象的でした。また、私は「意識」の話を聞いて、皮膚に刺さない鍉鍼がなぜ効くのかようやく理解できたんです。それまでは「鍉鍼なんて」と思っていました。

    あれから13年も経ったなんて、まさに光陰矢の如し。うかうかしていられません。互いに頑張りましょう。

  • #3

    東京・呉竹OG (水曜日, 27 4月 2016 15:31)

    昨年、お便りした者です。大分も余震が続いているので首藤鍼灸院の皆様の事が心配です
    第30回セミナーの動画を有難うございます。腹診とてい鍼の回を重点的に閲覧しております
    3月初めに金と銀のてい鍼をセットで入手しました。動画を参考に使ってみたところ、
    得気の際、金は“うららかな春の気候”、銀は“初夏の爽やかな風”という感じがしました。
    あくまでも私の個人的な感想ですが。更に追試してみたいと思います。

  • #4

    高嶋 (木曜日, 28 4月 2016 23:10)

    九州では今も余震が続いており、油断ならぬ状況です。
    雨の日も多いので、二次災害が起きぬよう祈るばかりです。

    鍉鍼の感想、とても文学的な表現ですね。金は補、銀は寫に用いるという意見が多いようですが、私は金の鍉鍼が手に持ってて心地良いので、好んで使っています。

網上にある鍼灸院です
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