2014年

6月

20日

『経絡治療・第197号』の感想文について訂正とお詫び


先日発行された『経絡治療・第197号』に私が書いた感想文、『第29回経絡治療学術大会「伝統を守る鍼灸治療」九州大会に参加して』に訂正箇所がありました。

 

場所は3ページ、黒岩弦矢先生の講演の部分です。12行目、細脈を大脈に。17行目の太くを細くに。18行目の浮を沈に。18と19行目の濡を軟に訂正してください。

 

訂正箇所
訂正箇所

せっかく素晴らしい講演だったのに、誤った情報を載せてしまい、申し訳ありません。原因は会場で私が聞き間違えたことと、そのメモを病理的に確認しないまま感想文を書いてしまったからです。次号の巻末に訂正が載るということですが、意味が正反対になっている所もあり、少しでも早く読者の混乱を解消できればと思い、ここでも訂正させていただきます。黒岩先生と読者の先生方にお詫びします。

 

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2014年

6月

13日

第160回弦躋塾の続編

第160回弦躋塾、塾長の臨床講義は予定外だった腰痛と内臓疾患まで話が及んだので、要点をおさらいしてみる。

腰痛

 

問診の際に、いつから・どういう動作で・自発痛はあるか・耐えられるか・痛む場所はどこか・初めての経験か・病院には行ったか・スポーツはするか等を聞きだすことで鑑別がしやすくなる。望診では、疲れた様子はないか・顔貌や顔色はどうか・動きや姿勢、歩き方はどうか等を素早くチェックする。徒手検査では、母趾の背屈と底屈テスト・足背動脈と後脛骨動脈の拍動を確認し(全く触れない場合は血管外科へ)、SLR、PTR等を行なう。

 

慢性の場合は、朝のこわばり・歩行時に痛むか・中腰で痛むか・痛むポイントがあるかを聞く。リウマチ性には刺入しないこと。朝起きるときが痛む(寝腰)のは瘀血によるもので女性に多い。骨盤臓器の循環障害、ホルモン異常より起こる。浅い鍼でないとならない。骨粗鬆症の場合、特に女性で70歳以上で痩せていて腰が曲がっている人には刺入しないほうがよい。灸はすえていい。急がずに長期間かけて治すことが大切である。

 

局所は軽擦をして硬結が指に引っかかるか、冷えはあるか、熱はあるか、痛む場所は限定しているかを確認する。伏臥位のときは足首を逆ハの字にすると腰のツボがわかりやすい。硬結を探すのが難しい場合は側臥位だとわかる場合もある。 ぎっくり腰で前後屈が痛む場合は仙腸関節に対する腸骨点や腎兪に、体幹を回旋させて痛むのは志室に反応が出やすい。上仙穴(L5)の痛みには多壮灸がよい。棘突起痛には皮内鍼を保定し、好転しなければ灸をすえる。肋間神経下部(T11.12)の痛みはリウマチ性を考える。うつで腰痛が出ることもある。四診により、どの経脈の変動か確かめる。

 

本治法は1穴に全力をいれて1分ぐらい行なう。患側がより凹んでいることが多い。標治法も1穴に全力で刺鍼し、あとは流す。分からない場合は置鍼をするとよい。急性症では効果が見えるか、慢性症ではどの程度全身治療をするかが鍵となる。やり過ぎに注意すること。翌日に痛くなったら、治療が間違っているか、やり過ぎである。 禁忌としては、患部を強くもまない・入浴やアルコールは控える・整体などをしないなど。洗面や動作のときは膝を使うよう注意する。また内臓から来る腰痛として、胆嚢の反応は右腰上部に、膵臓は左腰の上部に反応が出る(左梁門の異常や、便が軟らかいかも確かめること)。突然の疝痛で痛みが激しく、腎兪や志室を軽く叩打してひどく痛む場合は尿管結石を疑う。脾虚証なら太白、肝虚証なら太敦など、本治法が良く効く。前立腺では小野寺臀点の付近が痛む。生理痛など婦人科疾患でも腰痛が出る。子宮ガンによる腰痛もある。専門医を紹介すべきだが、わかっていて鍼灸治療に来る場合は超旋刺、接触鍼、鍉鍼など軽微な刺激を心がけること。


講義中の首藤先生
講義中の首藤先生
弦躋塾の風景
弦躋塾の風景

内臓疾患

 

慢性なので長期の治療が必要。週一回の治療を長続きさせるのが理想だが、臨機応変に。灸を併用する。思いがけない効果がでる。本治法で体力をつける。局所治療は内臓の直接治療となる。腹部の治療は症状がなくてもすべきである。病院の診断・治療の経過を参考にする。

 

肝臓に関する症状に鍼灸はよく効く。右季肋部だけでなく、左にも注意する。よく使う経穴は曲泉・太衝・足三里・中脘・右梁門・肝兪。右不容に皮内鍼。中脘・右不容・太衝(または足三里)に灸。

 

肺に関する症状は腎虚証、肺虚証が多い。経金穴を使う。腋下点に皮内鍼。鎖骨下方、中府・兪府・霊台・肺兪・天宗に治療する。数脈の場合は体温を測り、刺入せず接触鍼にする。大椎に灸。

 

心臓に関する症状には動悸、不整脈、胸痛、胸の圧迫感、少気などがあるが、医療機関で検査を受けてもらい、結果を参考にして鍼灸治療の方針を立てるのがよい。脾虚証で治療することが多い。巨闕・左天宗・左心兪・左労宮・左腋下点。

 

腎臓はクレアチニンの数値を参考にする。本治法は腎虚証なら復溜・尺沢・腎兪、脾虚証なら太白・大陵・脾兪。標治法は石門・水分・志室・失眠などに治療する。

 

その他、臨床に即した話を多く聞けたが、メモを取るのが遅くて記録できなかった。今回分はレジュメが無かったので、『首藤傳明症例集』を併読しながら復習をした。不思議なことに、勉強会から帰ると、学んだ内容の症状を訴える患者が来院するものだ。昨日も症状と部位から、「あっ、これはリウマチ性か」と気づいたケースがあった。

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