2015年

5月

10日

第30回 経絡治療学会記念学術大会 東京

3月29日~30日の2日間、東京国際フォーラムB5にて「第30回 経絡治療学会記念学術大会 東京」が行なわれました。今回は首藤先生の会頭講演があり、弦躋塾生も東京に集合しました。また池田政一先生(経絡治療学会)・樋口陽一先生(古典研究会会長)・中田光亮先生(東洋はり医学会会長)による鼎談や、支部長・部会長らによる実技(9名×40分=6時間)など、学びどころが満載の学会でした。参加者は700名と大盛況でした。

首藤先生を囲んで
首藤先生を囲んで
会場の東京国際フォーラム
会場の東京国際フォーラム

首藤先生の会頭講演は、師匠の三浦長彦氏のエピソードから始まり、開業から現在に至るまでの56年間を1時間に凝縮して話されました。

 

「開業して15年が過ぎたころ、経絡治療をやろうと本間祥白先生の『経絡治療講話』を読んだが、脈診の実技になるとさっぱりわからない。これは本の勉強ではなく実物を学ばなくては駄目だと思い、北九州の小倉で行なわれた経絡治療研究会に参加した。丸山衛先生に腎虚証と診断され、復溜に鍼をしてもらったら、なかなか治らないでいた腹の張りがスーッと取れた。これは本当らしい。理屈よりも治ればいい。(この方法で患者が)治るかどうか10年やってみようと思い、40年が経った」。

 

そして患者を治療しながら理解した4つの古典的解釈(①『霊枢経脈十』の小便数而欠の欠は、あくびではなく尿量が少ないということ。②『霊枢九鍼十二原第一』の氣至の具体的な感触。③骨折をしてわかった『難経七十八難』知為鍼者信其左の意味。④『鍼灸甲乙経精神五蔵論第一』精神は五蔵に宿り、鍼灸で心の調律をすると、WHO健康定義であるsocial well-being=ボランティア精神=忘己利他の精神に至る。)や、鍼灸が奏功した疾患(脳卒中・目眩・眼筋麻痺・尿管結石・喘息・抑鬱・アカラシア・緑内障・舌咽神経痛・糖尿病・吃逆)などを紹介しました。最後に首藤先生は、「経絡治療の特徴は本治法1本で様々な症状に対応できること」にあり、鍼灸の理想的な形だとして世界遺産の登録を提言しました。

 

また、五蔵の診断治療点として首藤先生の腹診についても話す予定でしたが、時間の都合で省略されました。スライド画像製作を手伝わせていただいたので私も残念です。次の機会に講義いただけると思います。

懇親会で挨拶する首藤先生
懇親会で挨拶する首藤先生

実技と鼎談については『北米東洋医学誌』の7月号にレポートを書いたので、ここでは全体的な感想を述べます。今学会はボクシング会場のような座席配置だったためか、演者もやりにくそうでしたし、座席によってはスクリーンの文字を見るために無理な姿勢をとらなくてはなりませんでした。首を横上に向けていた私も講演に集中できないことがありました。

 

橋本先生の教育講演「経絡治療75年の経絡観」は、経絡治療の歴史を知る上で大変参考になりました。ただ、背後の画面を見ながら話に追いつくのが精一杯で、メモを残すことができなかったのが残念でした。

※(6/7追記)『経絡治療誌』no.201にスライドも含めて講演内容が掲載されました。これでばっちり復習できます。


実技では9名の先生にそれぞれの技術・学術を披露していただき、四診でのポイントや病理考察、刺鍼の際に気をつけることなど、色々と学べました。会場の4割が初参加と知ってわかりやすい表現に徹した中根先生や、体表観察や脈状の把握から、なぜそこに鍼をするのかという病理考察を丁寧に解説した山口先生など、若い世代ならではの柔軟性と視野の広さに魅力を感じました。また、実技=臨床と考えた場合、馬場先生の実技はシンプルかつ説得力がありました。自然体でいながら観衆を笑顔にさせてしまう、なにか滲み出てくる人間力のようなものも感じました。


鼎談では興味深い話がいくつもありました。坐骨神経痛を古典研では気虚と捉え、池田先生は血虚と捉え、中田先生は気虚も血虚も両方あると話されていたことや、「浅い鍼で治る患者が多いと浅い鍼ばかりになるし、深い鍼をして治ると、ついつい深い鍼をする傾向になる」と話されていたこと。「相性の良く合う患者というのがいて、合わない患者は治りが悪い。これは気の交流だから仕方が無い」など、ベテランの先生同士の本音トークが聞けました。

 

首藤先生と中田光亮先生、新井康弘先生と漢方鍼医会の皆さん
首藤先生と中田光亮先生、新井康弘先生と漢方鍼医会の皆さん
トップオブシナガワで乾杯
トップオブシナガワで乾杯

今学会は懇親会の参加費が無料ということもあり、大変な賑わいでした。2年前の弦躋塾セミナーで講師をしていただいた中田光亮先生や、東京時代にお世話になった東京漢方鍼医会の先生方と話す機会がありました。その後、品川プリンスホテル最上階にあるラウンジにて2次会となりました。ここは首藤先生のお気に入りの場所です。私にとっても先生と4時間半飲み続けたことのある思い出の場所であり、今回も皆さんと楽しい時間を過ごさせていただきました。

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