2014年

7月

15日

第161回弦躋塾

臨床講義をする首藤塾長
臨床講義をする首藤塾長

2014年7月13日、大分ソレイユにて第161回弦躋塾が開催された。塾長の首藤傳明先生による臨床講義「五蔵と腹診」では寒冷蕁麻疹の症例を中心に、患者の右側から行なう腹診によって左側からでは気がつかないような変化を発見できることや、右上腹部と肝臓の関係性、とくにアレルギー性疾患(皮膚病、喘息、RA、花粉症など)においては腹部の変化に注目すべきであることを話された。

 

腹部の診どころについては募穴のほか、『脈経』『黄帝内経明堂』『難経』『夢分流』『経絡治療講話』『鍼灸医術の門』『経絡治療要綱』等の記述を挙げ、手描きの図も交えて、どのような穴が重要視されているかを比較検討した。また首藤先生の臨床では肝虚証なら右季肋部(不容)、脾虚証では左梁門、肺虚証では中府、腎虚証では石門、そして心の変動は巨闕に反応が現れるとし、むしろ膻中には胃や食道、自律神経の症状が反映されると述べられた。

 

首藤先生による腹部の診所
首藤先生による腹部の診所
リレー講義 三浦先生
リレー講義 三浦先生
リレー講義 関先生
リレー講義 関先生

塾生によるリレー講義は、三浦由夫先生と関功芳先生が担当した。三浦先生は「治療家はどの様に自分の体を護るのか?」というテーマで講義をされ、自分の体に鍼をすることで健康を保ち鍼灸の効果を確認することや、自分自身に効果があったことを確認してから患者に鍼をすることが大切であると述べられた。そして癌患者の症例と、激しい腰痛が痔によるものであった症例を報告された。鍉鍼による実技では金を補、銀を寫として用い、大胸筋や側腹部を緩めるために環跳(大転子の後方)、内転筋を緩めるために脾経のツボに鍼を当て、その場で可動域の増大や圧痛が取れることを確認した。

 

関先生は「双胎妊娠の逆子治療」と、「EBウイルス感染症(伝染性単核球症)罹患者への鍼治療」の症例報告をされた。前者では腎虚証で治療をし、三陰交と至陰に透熱灸(半米粒5壮)及び自宅施灸を行い、2回目の鍼灸治療後に、31週の検診で逆子だった第2児が頭位になっていることが確認された。その後も安産を目的に鍼灸治療を継続し、無事に姉妹を出産した。後者は高熱と吐気、黄疸の症状で入院中の患者に対して鍉鍼と井穴刺絡の治療(肺虚証)を2回行なった。EBウイルスによる伝染性単核症は、主に思春期や成人期での初感染が多くなっているとのことだった。症例の報告後、関先生も実技を行なった。

 

肩背部の治療
肩背部の治療
患者の右側から腹診
患者の右側から腹診

首藤先生の実技では、腹診による五蔵の反応点の探り方を披露された。まずは患者の右側に立って右不容、巨闕と反応を診る。右の季肋部は主に中指を用いて、やや深いところまで指を沈めて診察されているようだった。次に患者の左側から左梁門、石門、中府を診る。もちろん両側から診れば、なお正確を得やすいとのこと。これら腹部の反応点を脈証と合わせて診察することで証の決定がしやすくなるし、脈がよく分からないときの判断材料にもなる。

 

たとえ患者が内臓の病症を訴えなくても、腹部に反応があれば内蔵の働きが正常でないことが推定されるし、五精が乱れている(こころの病)場合もある。たとえば肝虚証であれば曲泉だけでなく、季肋部や不容の反応点、また反応がなくても1本の鍼で治未病ができるようになると首藤先生は話された。確かに気がつけば内蔵を病んでいたということも考えられる。内蔵の治療と予防に、明日から本治法と一緒に腹部反応点を活用してみたい。

 

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